平成2年(1990年)度

オブジェクト指向言語C++による
2輪車サスペンションシミュレータの制作

研究者:伊倉淳一

指導教官:町田秀和

緒言

 本研究では2輪車サスペンションのシミュレータの制作を行うにあたって、複雑な相互関係を持つシミュレータを適切に表現できるオブジェクト指向の考えをとりいれた。
 オブジェクト指向とは、プログラミングにおける構造化の考えをさらに突き進めたプログラミングの手法である。

 オブジェクト指向を取り入れることによる利点は、
@サスペンションの動作時には、さまざまな要因が複雑に絡み合っているので、各要因を1つのオブジェクトとして捉えると理解しやすい。
A各要因は時時刻刻と変化し、ときには異なった要因が同時に変化することもありえるが、これを忠実に再現できる。(リアルタイムモニタの実現、並列処理)
 といった点があげられる。
 シミュレータの制作にあたって、サスペンションの構造、動作原理、運動方程式、各部の寸法などを調べた。また、各要因がどのように影響しあっているかも検討した。結果、本文中図5.2に示すメッセージ伝達ネットワーク図を得た。(オブジェクト指向によるシミュレータの制作においてはネットワーク図が全て、といっても過言ではない)
 上記の事柄をふまえて制作されたシミュレータは現実におこりうる結果を等しく再現することができた

結言

 我々は、様々な事象が複雑に影響し合う2輪車サスペンションのシミュレータを実現するため、オブジェクト指向という概念を導入してこれを構築した。これに当たっては、オブジェクト指向型のプログラミング言語であるC++を使用し、試行錯誤による処理が行える環境を実現した。
 本研究では、物理的な対象をオブジェクトとして捉え、それらの間のメッセージ伝達ネットワークを考えた。
 サスペンションの減衰自由振動の基本的な処理を実現し、さらに速度や路面状態の変化といった外的要因による状態の変化を表現する環境を構築した。
 これらの実現においては、バネ定数や、スピードなどをオブジェクトとしてとらえることで、より現実に近い形でシミュレータを記述することができた。
 オブジェクト指向言語C++を使用することによって、複雑な相互関係をもつシミュレータの内部構成をスマートに表すことができた。
 このシミュレータは、サスペンションが実際にどの様に変化するのかがグラフィックスにより確かめられることでサスペンションの基本設計、あるいは振動を理解する上で大きな助けとなるだろう。