平成5年(1993年)度

単純適応制御によるDCモータの制御

研究者:坪根太平

指導教官: 町田秀和

諸言

 本研究では、プラントの変動に対してコントローラを時々刻々と調整をする適応制御 において、従来のモデル規範型適応制御系(Model Reference Adaptive Control System:MRACS)と比較して、構成が単純で実現に適していることから 最近注目されている単純適応制御(Simple Adaptive Control:SAC)を用いて、 サーボ(1リンクアーム)およびレギュレート(大車輪型倒立振子)の制御を 実現することを目的とする。
 我々は最初に、実験装置の製作を行なった。 これは、ギヤードモータや回路基板をカードラックに差し込む方式を採用する等、 簡単な構造で扱いが容易にできるような設計を心掛けた。 また、製作した実験装置で制御実験を行なうために、まず、そのパラメータを計測する 必要があり、比例制御系を構成して、パラメータ同定を行なった。
 そして、大車輪型倒立振子の制御を、 比例積分制御で実現した。その結果、振子を倒立させることができたが、完全にレギュレートを行なうには、ギヤボックスの減速比を大きくする必要があることが考察された。 また、この結果、パラメータ同定結果が正しいことが確認できた。
 それから、1リンクアームおよび2リンクアームのSACは、シミュレーションを行なった。 1リンクアームでは、初期の適応ゲインの変動を抑えるための、藤中らの方法\cite{s7}による微分動作の固定微分ゲイン、およびプラントのゲインを調整するための固定比例ゲインを適当な値に選ぶことにより、完全追従が達成できることが確かめられた。
 その結果、プラントのゲインが大きすぎ、モータの入力電圧が非常に小さくなることが判明した。これを解決するためには、モータの減速比を大きくすればよく、 すぐに実現が可能であると考えられるが、これは今後の課題とする。
 2リンクアームでは、適応ゲインを行列で構成することにより、多入出力のSACが実現 できることが確かめられた。

結言

 本研究では、最近注目されている単純適応制御を用いてメカニカルシステム の制御を実現することを目的とした。
 まず最初に、実験装置の製作をした。そして、実験を行なうために必要なパラメータを計測するために、比例制御系を構成して、パラメータ同定を行なった。
 そして、比例積分制御により、大車輪型倒立振子の制御を行なった。 その結果、振子を倒立させることができた。このことより、パラメータ同定の結果が正しいことが確認できた。しかし、完全にレギュレートするには、モータの減速比を大きくすればよいと考えられる。
 また、1リンクアームのSACのシミュレーションは、適応ゲインの初期の変動を抑えるために、藤中らの方法で微分項を加えた。 その固定微分ゲインが大きすぎると適応ゲインは増大し、 逆に小さすぎると効果がないことがわかった。また、プラントのゲインを調節する固定比例ゲインを適当な値に決めると、完全追従が実現できることが確かめられた。
 その結果、プラントのゲインが大きすぎて、入力電圧が小さくなることがわかった。それの解決策としては、モータの減速比を大きくすればよいと考えられる。
 つぎに、2リンクアームのSACのシミュレーションをプログラミングしたが、適応ゲインを行列で構成することにより、多入出力のSACが実現できることが確かめられた。
 最後に、今後の課題は、大きな減速比のギヤボックスを用いることによって、我々の設計した装置で、 1リンクアームのSACを実現することである。