3.1 Cycle Slip(サイクルスリップ)
ここでは入力周波数に出力周波数が同期していくときの位相比較器(PD)の
応答から見ていきましょう。そうすれば、離散的で「位相が滑る」(サイクルスリップ)
という現象が見えてきます。
下図のアプレットは、
EXOR型位相比較器 の入出力波形の位相の変化の様子を示しています。すなわち上から、
【1】一定周波数f1の
基準参照入力信号u1、
【2】周波数が直線的にf1に一致していくもう一つの入力信号(チャープ信号)u2、
【3】u1とu2の
EXORをとった出力信号ud、
【4】u1の位相、
【5】u2の位相、
【6】udの位相です。
(ただし、180度回転すれば0にリセットするラッピング表示をしています)
さて、右側の回転子(フェーザー)を見てください。
2つの入力信号(u1の位相子とu2の位相子)の間の位相差が0および180度になった時に、それらのEXORをとったudの位相子の回転方向が反転しています。
このときに『サイクルスリップ』(位相すべり)が発生してしまっています。左側の波形図の
黒い縦線のところがその時点であり、EXORをとった出力信号udを見ると確かにデューティの増減が反転しています。
【周波数差を増減したときのサイクルスリップの様子】
次に、周波数の差を大きくしたり小さくしたりしたときのサイクルスリップの様子を観察します。
下のアプレットの波形は上から、【1】一定周波数f1の
基準参照入力信号u1、
【2】周波数が直線的にf1に一致していくもう一つの入力信号(チャープ信号)u2、
【3】u1とu2の
EXORをとった出力信号ud
です。
このアプレットの上辺には上下2段のスライドバーがあります。1段目は
基準参照入力信号u1
の周波数、2段目はもう一つの入力信号(チャープ信号)u2の初期周波数(最終周波数はu1と同じ)です。特に2段目のスライドバーを右にドラッグしていくと、「ロックしていうときにどのようにサイクルスリップが起こるか」が分かります。
This applet was created by M.Mori in 2003.
さてPLLは実際にはフィードバック制御系ですので、このように位相差(偏差)がサイクルスリップ
を起こして振動すると、「過渡応答も奇妙に振動する」ことが用意に予想されます。
これは「ブルイン振動」と呼ばれてPLL特有の現象として知られており、数値的に解析
するのは困難(高次になる)です。しかし、次に示す「PLLの機械振子のアナロジモデル」
を用いると、どのような現象なのかを視覚的に捉えることができます。
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